大会長挨拶

地域の危機と自殺対策:東日本大震災津波から10年、コロナ禍から1年

東日本大震災津波の発災から10年が経過しました。あらためて震災津波により亡くなられた方々に深く哀悼の意を表しますとともに、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。また、長きにわたる困難を経験された被災者の方々に心からお見舞いを申し上げます。そして、今なお復興の途上にある被災地の復興や、被災者の皆様方が日常の生活を取り戻されることを切に願っております。

また、昨年に始まるコロナ禍の状況で過酷な日々をお過ごしの方々に心からお見舞い申し上げます。そして、支援者の皆様方におかれましても、それぞれの方々が困難な状況の中で活動されたことと存じ、こころより敬意を表します。

従来から被災地のさまざまな困難や自殺リスクについて指摘されていましたが、東日本大震災津波という大規模災害があたえた甚大な被災地の影響をうけ、2012年の自殺総合対策大綱の改定により被災地のこころのケアや大規模災害の復興が自殺対策に位置づけられることになりました。そして、被災地の自殺対策の重要性の認識がひろがり、対策が推進されてきました。10年を過ぎた現在においても被災地では多くの困難と直面しています。

東日本大震災から相次ぐ台風災害にコロナ禍の状況が重なり、住民の方には甚大なストレスとなっていて、心理社会的リスクは高まっています。辛く悲しい出来事や悩みなど困難な状況では地域とのつながりや人と人との信頼関係が重要となりますが、コロナ禍により、今はできずにいる状態の方も少なくありません。発災時の悩みは共通性がありましたが、月日が経つことで複雑化し、困難な問題に直面します。

世界では災害の十数年後に被災者へのメンタルヘルスへの影響があることが知られていましたが、長期的なストラテジーによる被災地の対策の知見は十分にありませんでした。被災地で住民が安心して暮らせるようになるにはまだ道半ばであり、こころの復興への歩みと支援がこれからも重要です。

そして、現在、従前の困難さに加えて、被災地や多くの地域でコロナ禍の状況での苦難が加わり、より深刻な影響が生じています。このような地域の危機において、苦悩を抱えてる方々や周囲の方々に寄り添い、人間の尊厳を守ることは、時代や状況を超えて普遍的に求められてきました。本質の正しい情報提供,人の尊厳を守ること,関連する偏見の除去や周囲の支援や思いやりを広げること,対策推進の姿勢を明示するということがより一層求められています。自殺対策はこれらの甚盤のうえに,自殺のリスクアセスメントや危機介入,地域での働きかけを広げていくことだと考えられます。地域の危機への支援として自殺対策は重要な役割を担っており、安心して暮らせる地域づくりに貢献していくことが大切な視点と考えています。

第45回総会ではコロナ禍の状況を鑑み、予防的観点から、従来の地域開催ではなく一般社団法人日本自殺予防学会の主催によるオンライン開催とさせていただきました。そして、本総会は第45回日本自殺予防シンポジウムを日本いのちの電話連盟との共催により同時開催いたします。開催の準備およびご案内が遅れましたことを会員の皆様や関係各位にあらためてお詫び申し上げます。本大会では地域の危機と自殺対策について考える機会となりますことを願っております。多くの皆様のご参加をこころよりお待ちしております。

そしてあらためて全国の自殺対策に関わられる方々や被災地支援や惑染症対策に関わる方々へ敬意を表するとともに,ご健勝をお祈り申し上げます。

第45回日本自殺予防学会総会
大会長  大塚耕太郎
一般社団法人日本自殺予防学会 事務局長